阿弥陀南稜を登ってきました。メンバーはいつもお世話になっているリーダーのK氏、横浜の山岳会所属のSK氏、そしてこの文章を書いているSです。

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舟山十字路に車を停めて支度をします。このあたりは標高が低い為か、林道は積もった雪が溶けて再凍結し、アイスバーン状になっていました。僕の軽はスタッドレスを履いていたのですが、車幅が狭い為に轍に乗れず、車輪がずれる度にタイヤが滑りるので、慎重に車を運転しました。

ゲートを過ぎてからはしばらく林道を歩きます。やがて道の右側に現れるトレースに入り、阿弥陀岳と書いてある朽ちた道標を横目に見ながら、右側の尾根に取り付きます。暗い尾根に明瞭に付けられたトレースを辿り(トレースは思ったよりもしっかりしていて歩きやすかったです。少なくない数の人が入っているんですね)、立場山のピークを過ぎると、間もなく視界が開けて青ナギです。ここからは阿弥陀が見渡せました。以前ここを歩いていたら足元のすぐ傍で雪庇が崩壊した事があったんだよ、とK氏。雪庇からなるべく遠いところを選んで歩きました。

青ナギをすぎると、また樹林帯に入り、傾斜が急になった尾根を登って行きます。だんだんと木が疎らになって行き、視界中に青空が占める割合が増えて来ると、風成雪が吹き込んで来るのか、それとは反比例するようにトレースは不明瞭になっていきます。やがてラッセルが始まりました。三人で交代しながらラッセルをして登ります。この辺りまで来ると、木々にも雪がたっぷりと付いていて、あたりは幻想的な景色。息を切らしながらも風景を楽しんで登りました。

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無名峰のピークでアイゼンをつけます。この辺りで森林限界を越えるのですが、周辺の景色は圧倒的な冬山のものであるにもかかわらず、遮られるもののない暖かな陽射しと全くの無風のお陰か、この辺りには厳冬期の雪山の稜線とは思えないような、とてもピースフルな空間が広がっていました。この文章を書いている時点で、山行から、はや一ヶ月が過ぎようとしているのですが、この時の記憶は目を瞑ると、今でも克明に再現する事ができます。僕は今までに自分は、主に夏山に限定したの話になりますが、少なく無い数の山を登っていて、不思議なものや綺麗なものは大方は見てしまっただろう、と思っていたのですが、この日のこの空間はそれ以上のものでした。雪山の魅力というものの一片を垣間見た気がします。

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話が脱線しました。P1を過ぎて、幕営地であるP1とP2の間のコルに到着すると、テントを張りました。この時点で、午後2時半を回ったところでした。

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そして壮大な宴会が始まりました。歩いている時間よりも長くやっていた気がします。僕は途中でリタイヤして寝袋に入ってしまったのですが、K氏とSK氏は更に夜更けまで飲んでいたようです。


二日目は、前日の晴天から一転、テントから顔を出すと曇り空が広がっていました。風に関してはそれ程強くは無かったので、テントを畳むと先に進むことにしました。この時点で隣のテントの男性が先行していたので、トレースはついています。

核心であるP3の雪壁に着く頃には、雪が降り出していました。ここはアイゼンの前爪で固く締まった雪壁を蹴り込みながら登って行きます。雪が思っていたよりも多かった為、支点を取る事が出来ず、ノープロテクションで登りました。途中、岩が雪から顔を出しているところで、岩に乗らなければならなかったのですが、この岩の表面は氷化していて、乗り込むのにとても緊張しました。ここは、K氏のアイゼンクライミングの要領で、というアドバイス通りに越えました。

続いてのP4ですが、ここが一番緊張しました。岩の左側を巻いていくのですが、幅が靴一個分くらいしかない、雪の付いた細い足場の上を、張り出している岩をへつりながら進むのです。距離は2mに満たない位なのですが、足場の左側は切れ落ちていて、落ちたらただではすまない様子。この頃には、天候は風雪に変わっていて、視界が狭い事が幸いしたのか、無事に越える事ができました。越えてから、K氏から、「岩にガバがあって、それを使えば楽勝なんだけど、今年は雪が多くて埋まっていた」という事を聞きました。

山頂直下の傾斜の緩い雪壁を登ると、阿弥陀岳の山頂です。

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記念撮影をした後、天気も良くないので早々に御小屋尾根を下ります。途中で降りる尾根を間違えて無駄なラッセルをするハメになりましたが(これは僕のせいです。すいません。)、無事に舟山十字路に戻る事ができました。

☆山行形態☆ 個人山行
☆山域☆ 八ヶ岳 阿弥陀南稜
☆山行日☆ 2012年2月
☆天候☆ 晴天~風雪
☆メンバー☆ 1人(340)+2人